会社員と個人事業主で年金はどう違うか
日本の公的年金は二階建てにたとえられます。一階部分が全員共通の国民年金(基礎年金)、二階部分が会社員や公務員が加入する厚生年金です。
会社員のときは、この一階と二階の両方に加入していました。個人事業主になると二階部分がなくなり、一階の国民年金だけになります。これが「個人事業主は老後の年金が少ない」と言われる理由です。
加えて、保険料の負担のしかたも変わります。厚生年金の保険料は会社と折半でしたが、国民年金保険料は全額自己負担です。しかも所得にかかわらず定額なので、収入が少ない時期ほど負担感が重くなります。
払うのが難しいときの免除・猶予
収入が不安定な時期に保険料を払えない場合、未納のまま放置するのは避けてください。未納期間は年金額に反映されないだけでなく、万一のときの障害年金や遺族年金を受け取れなくなる可能性があります。
所得が一定以下の場合には、申請によって保険料の全額免除や一部免除、若年者納付猶予といった制度を利用できます。免除が承認された期間は、受給資格期間に算入され、年金額にも一定割合が反映されます。未納とは扱いがまったく違うのです。
また、免除・猶予を受けた期間の保険料は、10年以内であれば後から納める(追納する)ことができます。事業が軌道に乗ってから追納すれば、年金額を回復させつつ、その年の社会保険料控除にも使えます。
まず検討したい「付加年金」
個人事業主が使える上乗せ制度の中で、もっとも手軽なのが付加年金です。国民年金保険料に月額400円を上乗せして納めると、将来受け取る年金に「200円 × 付加保険料を納めた月数」が毎年加算されます。
ここで注目したいのは、この加算が毎年続くという点です。納めた総額に対して、受給開始から2年で元が取れる計算になり、その後は上乗せが続いていきます。月400円という金額の割に効果が分かりやすい制度です。
手続きは市区町村の窓口で申し込むだけです。ただし、後述する国民年金基金と同時には加入できないため、どちらを選ぶかは検討が必要です。
二階部分を自分で作る制度
厚生年金がない分を補うために、個人事業主向けに用意されている制度がいくつかあります。それぞれ性格が異なるので、比較してみましょう。
| 制度 | 性格 | 税制上の扱い |
|---|---|---|
| 国民年金基金 | 終身年金を上乗せできる。掛金は加入時に確定 | 掛金が全額所得控除 |
| iDeCo(個人型確定拠出年金) | 自分で運用先を選ぶ。成果によって受取額が変動 | 掛金が全額所得控除 |
| 小規模企業共済 | 廃業・退職時の退職金にあたる。貸付制度もある | 掛金が全額所得控除 |
国民年金基金
加入時に将来の受取額が決まる確定給付型で、終身年金として受け取れる型を選べるのが特徴です。運用リスクを負いたくない方に向いています。一方で、原則として途中でやめることができない点には注意が必要です。
iDeCo
自分で選んだ商品で運用し、その成果が受取額に反映されます。運用益が非課税になるメリットがある反面、元本割れの可能性もあります。原則60歳まで引き出せないため、当面使う予定のない資金で行うことが前提になります。
小規模企業共済
個人事業主の退職金制度にあたるものです。掛金は月1,000円から始められ、途中で増減も可能です。掛金の範囲内で貸付を受けられる制度もあるため、資金繰りの面での安心感があります。ただし、加入期間が短いうちに解約すると元本割れするため、長く続ける前提で考えてください。
掛金が全額所得控除になるという意味
ここまで挙げた制度に共通するのが、掛金の全額が所得控除になるという点です。これは、老後の準備をしながら、その年の所得税・住民税を下げられることを意味します。
たとえば小規模企業共済に月3万円を積み立てれば、年間36万円が所得から差し引かれます。この36万円は貯蓄として自分の手元に残りつつ、課税所得を下げる働きをします。単純に貯金するのとは効果がまったく違うわけです。
ただし、いずれの制度も資金が長期間拘束されます。事業の運転資金や生活防衛資金を確保したうえで、余裕のある範囲で始めるのが鉄則です。「節税になるから」という理由だけで掛金を上げすぎると、資金繰りに苦しむことになりかねません。
優先順位としては、まず生活費の数か月分を現金で確保し、次に付加年金のような負担の小さいものから始め、事業が安定してきたら小規模企業共済やiDeCoの掛金を増やしていく、という順序が現実的です。
自分の場合の概算を見てみる
掛金を所得控除に入れた場合、税額と保険料がどう変わるのかを試算してみてください。
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